清鈴神社のお狐さま!?_5

清鈴神社のおきつねさま!-小森あしか編-

 当の本人が登場した。

「ねっねぇ、時嶋君……? このっ、この人……えっ、人? ……人たちって……」

 しどろもどろになりながら、ナナが時嶋君に質問をした。

「――僕以外に視える人がいるなんて思わなかったや。……みんな視えているんだよね? 彼らはこの神社の、お狐さま、だよ」

(本当、なんだ……)

 時嶋君の言葉に、私たちも清丸たちも、なぜだか黙ってしまった。そして、私は驚いたが、やっぱりそうだったのかという気持ちにもなった。清丸から話を聞いて、まさかとは思ったが、あの時の男の子と本当に同じ顔をしているんだ。しかも、名乗ってもいないのに私の名前を知っていて、出会った時のことも覚えている。

「神様、なんだ……」

 気が付いたら、私はポツリとそう呟いていた。

「神様だけど、あしかのことが好きだよ? やっぱり、あしかが一番可愛い。……だから、結婚しよ?」

 今度は清丸が私の両手を握った。そして、そっと私の右手の手の甲にキスをした。

「えっ……」

 頭の中がいっぱいになる。――さっきから聞いていたら、恥ずかしいくらいに清丸は私に『好き』だの『可愛い』だの言ってくれている。……間近で見る清丸はカッコイイ。爽やかで笑顔がちょっと可愛くって、一瞬昔々に会っただけの私のことを好きだと可愛いと言ってくれて、ドキドキするようなことも平気でしちゃって……。

(え、いやいやいやいや!! いきなりキスする!?)

 顔から火が出そうなほど恥ずかしい。なのに、清丸は平気そうな顔をしている。

「……え、っと。清丸の言っていたあしかちゃんって、もしかして小森さんのこと……? さっき、名前聞いてあれ? って思ったけど。……は、はは……すごいや! 清丸、初恋の人に出会えたんだ! 良かったぁ! これでみんな、毎日言われなくても済むね!」
「……頼むハルト。お前までそっち側に行かないでくれ……」
「そっち側って?」

 時嶋君は、当たり前のように清丸たちの存在を受け入れて、人間と変わらない扱いをしている。驚いている私たちのほうがおかしいんじゃないかと思うくらいに、いたって普通に、とても自然に。

「みんな、そりゃあ驚いちゃうよね。……うちにこない? 多分、一回落ち着いたほうが良いと思うんだ」

 時嶋君の言葉に甘えて、私たちは揃って時嶋君の家に行くことにした。神社のすぐ隣、大きな一軒家。そこが時嶋君の家だった。

「ただいま」
「――おかえりなさい! ……って、あらららら?」
「……お邪魔します」

 控えめに挨拶をした。私たちを見て、恐らく時嶋のお母さんだろう人は、とても驚いた顔をしている。

「……ハルト、に、清丸君に音羽君に鈴緒君。……それに、女の子がいっぱい……?」

(え。視えてるの――!?)

 名前まで呼んでいた。存在を知っているんだ。

「この子、あしかちゃんなんだって」
「あらら!? じゃあ、清丸君やっと会えたのね!? 私も嬉しいわ~」

 私はそんなに有名なのかと、嬉しいやら恥ずかしいやらで顔が赤くなった気がした。これだけ一途に思われるのは嬉しい。でも、私はまた中学生だし、そもそも人間じゃない清丸と結婚は、今すぐには考えられないでいた。――いや、結婚は、大人になってからも考えられないかもしれない。とにかく、一気に色々起こったから、頭がパンクしそうになっている。

(……これだけ言いふらして? いたら、多分本気なんだよね……? でも、中学生で結婚? やっぱりよくわかんない!)

 時嶋君が戸惑っている私たちを部屋まで案内してくれた。そこで、簡単に清鈴神社と時嶋家について説明もしてくれた。時嶋君の家族は、みんなお狐さまのことが視えていて、会話もできるらしい。特に時嶋君は見た目の年齢が近いこともあって、まるで友達のように過ごしているとか。その中で、私の話も聞いていたと言っていて、本当に恥ずかしくなった。
 途中、時嶋君のお母さんもやってきて、色んな話をした。清丸は誰にでも私の話をしていたようで、『息子の初恋相手が現れたみたいでお母さん嬉しいわ』なんて言葉を置いて戻っていった。

「……あしかは、俺のこと嫌い?」
「……え」

 嫌い、なわけない。だって、私にとっても清丸は初恋の相手なのだから。でも、それを言って良いのかわからない。清丸は人間じゃないし、いきなりこんなことになって正しい判断をする自信もない。

「……俺のこと、信用できない?」
「か、神様だっていうのはわかったけど……。そ、その、私のことを……す、好き、っていうのも……」
「! それじゃあ……!」
「で、でも! 人間じゃないし……!」
「……あしかの不安、それだけ?」

 人間じゃないということは、大きな問題じゃあないのか。

「それなら、人間になって生活してみるから、その上で考えてよ」
「人間に、なれるの……?」
「ずっとなりっぱなしは無理だけどね。同じように学校に通ったり、デートしたりはできるよ?」
「デート……」

 人間になった清丸とデートする姿を想像して、また顔が赤くなった気がした。

「明日、楽しみにしていて?」

 そう言って笑う清丸。

 私はそのイタズラっぽい笑みから、目が離せないでいた。


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