「……ちょっと、探索してみても良いかな?」
私の発言に、みんなにこやかにオッケーをくれた。それぞれ興味のある方向が違うようで、みっちゃんは手水へ、ココは白蛇の住むらしい大きな木へ、ナナは奥の小道にあるという小さなお地蔵様の元へと向かった。当の私は何のあてもなく、一度全体を見てみようと、まずは境内へ向かうことにした。
(会ったのは、確か本当に入口付近だったけど……)
昔の記憶を必死で呼び起こす。道を歩いていて、たまたま通りかかった神社。その入り口付近に男の子は立っていて、気付いた私が手を振って、彼は笑顔で手を振り返してくれた。
ゆっくりと神社の中を歩く。あの時より、私ももうずっと大きくなってしまった。世間的にはまだ子供とはいえ、小さいとは言い難い。もし、小さな子の前にしか姿を現してくれなかったら――。 境内へ辿り着いた私は、お賽銭を入れて手を合わせた。
「……あの時の男の子に、会えますように!」
目をぎゅっと閉じて、言葉にしてみる。そうすることで、より願い事が叶う気がした。
「――あの時の男の子って、こんな感じ?」
「――え?」
後ろから声がする。慌てて振り返ると、そこには男の子が立っていた。
――フサフサの耳を頭につけて。
――まだ夏でもないのに甚平を着ている。
――大きな尻尾の男の子、が。
「え、えぇぇぇぇ――!?」
「大きくなったね、あしか」
「な、なんで私の名前を……」
「ずっと待ってたんだ、あしかのことを」
「え? えぇぇ? ダメ、意味がわかんない……!」
頭の中がグルグルしている。この男の子は誰なのか、何で私の名前を知っているのか。大きくなったとは? 待っていたとは?
「あしかだって、俺のことを探して、ここに来てくれたんでしょう?」
「え、わ、私は……」
「笑顔で手を振ってくれたの、嬉しかったよ。……視える人って、少なかったからね」
「……も、もしかして……。あっ、あの、あの時の……お狐、さん……?」
「大正解」
「えっあっ……えぇっ!?」
私は驚く以外何もできなかった。
「……アナタ……だったの?」
「そうだよ。また会えて嬉しいよあしか」
そう言いながら、彼は私の顔へ自分の顔を近づけると、そっと頬に手を添えてほほ笑んだ。
「自己紹介してなかったね。俺の名前は清丸-せいまる-。この神社の主、だよ」
「せい、まる……」
(……ウソ。そんなまさか……)
胸がドキドキする。清丸の手の触れた部分が、なんだか熱く感じた。清丸の目を見ていると、記憶の中のもやが晴れて、当時の男の子の顔が明らかになる。
――今目の前にいるこの男の子と、昔見た男の子は同じ顔をしていた。
「あっ、何でっ……と、歳……は? 変わらない? なんで?」
「そりゃあ、俺歳取らないから」
今の私と同じくらいの年。それは、今も昔も。普通なら絶対にありえない話のはずなのに、あっけらかんとした表情で清丸はそう言った。
「会いたかった、あしか。急にいなくなってしまったからね。ここから俺は離れられないし、どうしたものかと思ってたんだけど」
「あ、あの。ひ、引っ越しをして、その……」
「あぁ、分かってるよ。――そうだ。あの時、姿を現したのは俺だけだったけど、この神社には……」
「「――きゃあぁぁぁぁぁぁぁ――!!」」
悲鳴が聞こえた。
「もしかして、何かあったの!?」
私は慌てて声のしたほうへと走り出した。
「――間違いなく見えている、よな?」
「んー、そうじゃない?」
「――みっちゃん! ココ! ……って、誰……?」
視界に入ったのは、みっちゃんとココが抱き合って立っている姿だった。そして、その前にいたのは、清丸と同じ耳に尻尾、柄違いの甚平を着た男の子二人。
「どうしたの!?」
そこに、私と同じように声を聞いて駆け付けただろうナナもやってきた。
「え? 耳と尻尾に甚平? コスプレ?」
二人の男の子を見て、ナナがそう呟いた。
「コスプレ? まさか」
「これはオレたちの制服みたいなもんなんだけどなぁ?」
「――というか、全員『視えている』のか――?」
「えっ、それはすごいかも? ……うおぉ!? すごい! すごい!!」
「なんてことだ。……おい、清丸はどこへ行った?」
「ここだよ。――すごいね、ホント」
いつの間にか清丸もやってきて、狐の耳に尻尾の生えた男の子が三人立っていた。
「……何、これ。どうなってるの? 何のイベント?」
私の頭の中は、疑問でいっぱいだった。突如現れた清丸に、同じような格好をした男の子たち。清丸は昔見た男の子だと、自分でそう言っている。じゃあ、一体他の男の子二人は誰なんだろう。
「驚いた。あしかだけじゃなかったんだね。でも、俺が探してたのはあしかだけだけど。俺たちは、この神社の主。みんなが祀っている【お狐さま】だよ」
――お狐さま。
「ま、俺はあしかに会えただけで十分なんだけど。……ねぇあしか。俺とずっと一緒にいない? 幸せにするよ?」
「ずっと!? 一緒に!?」
突然の清丸の言葉に、訳もわからず同じ言葉を繰り返していた。
「なんだ清丸。この子がお前の言っていた【あしか】なのか?」
「そうだよ? ……ねぇ音羽、気安く呼び捨てにしないでもらえる?」
「良かったなー清丸! ずーっとあしかの話ばっかりしてたもんな!」
「……うるさい鈴緒。……鈴緒も気安く……」
「十年近くそればっかりだったもんな。……めでたい」
「なぁあしか、清丸と結婚すんのか!?」
「お前らちょっと黙ってろ」
清丸の機嫌が悪くなっていく。面白がられているようで嫌なんだろう。――それは私にもわかる。
「そもそも誰なのよ! この子たち!」
「ココもわかんない~!」
「えっ、何、何なの。全然意味わかんないよ……?」
「そ、そうだ! ナナ、時嶋君呼んできて! 彼の家なんでしょ!?」
「わっ、わかった!」
ナナがみっちゃんに言われた通り、時嶋君を迎えに行こうとしたその時。
「――え、なんでみんな一緒にいるの?」
「時嶋君!?」